この記事は、このような要望に応えるものになっていまして、
J-Plat Patを使って、参考となる検索論理式・検索報告書を見つける方法について、整理したいと思います。
J-Plat Patでは、登録調査機関が作成した検索報告書(検索論理式)を見ることができます。
この検索報告書は、検索のプロが作成したものであり、当然?、特許審査官もチェックしているものだと思いますので、とても勉強になるものだと思っています。
勉強をすることで、
が見えてくるかもしれません。
それでは、実際に、検索報告書を見てみましょう!
目次
関連する発明の検索報告書を見つける
J-Plat Patを使って、関連する発明の検索報告書を探すには、以下のプロセスを経ることになるかと思います。
- 自身の発明と特許分類を見つける
- 特許分類を使って関連する発明を検索する
- 関連発明の経過情報から、検索報告書にアクセスする
「①自身の発明と特許分類を見つける」、「②特許分類を使って関連する発明を検索する」というプロセスについては、別の記事において整理する予定です。
ここでは、これらのプロセスによって、以下の発明が見つかったと考えていただければと。
次に、この発明から、検索報告書にアクセスする方法について整理します。
アクセス方法は、以下の通りです。
【手順1】
【手順2】
- 特許庁では、多くの特許出願の先行技術調査を、登録調査機関に外注していますので、検索報告書を見つけることは比較的簡単です。
- 特許行政年次報告書2020年版では、登録調査機関に外注している先行技術調査件数は、14.6万件(2019年度)とのことです。そして、一次審査件数は227,293件(2019年)ということを踏まえると、6割以上の先行技術調査が、外注されているのかもしれません。(年度と年の違いを含め、計算の仕方は正しくないかもしれないので、参考程度と思っていただければと。)
- 検索報告書は、審査請求がされた後、特許審査官が審査するタイミングあたりで公開されているように思います。
- 特許出願から審査請求をするまでの猶予は3年あり、(特許行政年次報告書2020年版を見ると)一次審査(FA)までの期間は約10か月程度になります。なので、つい最近、特許出願された案件については、検索報告書が付いていないことが多いと思います。(3、4年前に出願された案件、若しくは、登録されている案件であれば、検索報告書が付いている可能性が高いと考えています。)
検索報告書に記載されている事項を確認する
先のプロセスで見つけた検索報告書を見ると、以下の情報が記載されています。
- 書誌事項
- 本願発明の特徴
- 検索論理式
- スクリーニングサーチの結果(提示文献毎の表示)
- スクリーニングサーチの結果(クレーム別形式)
以下、各項目の中身を整理していきます。
0.書誌事項
書誌事項欄には、主に、以下の情報が記載されています。
- 登録調査機関名【1】
- 検索者名
- テーマコード【2】
- 特許出願の番号
- 検索報告書作成日
【1】登録調査機関一覧はこちら。
【2】「テーマコード」ついては、別の記事で整理します。(追って更新予定。)
1.本願発明の特徴
本願発明欄の特徴には、以下の情報が記載されています。
- 発明の要点
- 課題
- 請求項
請求項には、以下のように、構成要素毎に番号が付与されています。(黄色ハイライト参照。)
2.検索論理式
検索論理式欄には、以下の情報が記載されています。
- 年月範囲
- 通し番号、検索論理式、件数等を整理した表
- スクリーニング件数合計
通し番号、検索論理式、件数等を整理した表は、以下のようになっています。
この検索論理式を見ることで、特定の技術において、例えば、
といったことが、参考情報として得られると考えています。
3.スクリーニングサーチの結果(提示文献毎の表示)
スクリーニングサーチの結果(提示文献毎の表示)欄には、以下の情報が記載されています。
- 通し番号、提示文献、代表カテゴリー、検索論理式の通し番号等を整理した表
- 提示文献数
通し番号、提示文献、代表カテゴリー、検索論理式の通し番号等を整理した表は、以下のようになっています。
代表カテゴリーについて
文献のカテゴリーとしては、主に、以下のものがあります。【3】
X | この文献のみで、調査対象の発明の新規性又は進歩性を否定できる文献 |
---|---|
Y | 他の文献と組み合わせることによって、調査対象の発明の進歩性を否定できる文献 |
A | 一般的技術水準を示す文献 |
例えば、上記の表内の文献1には、「A」というカテゴリーが付いていますが、
これは、この文献1が、「一般的技術水準を示す文献」であることを示しており、つまりは、
この文献1を使って、拒絶理由を構成することができないことを示しています。
【3】他のカテゴリーについては、以下のリンクにてご確認いただけます。
検索論理式の通し番号について
表の一番右側の列に、【式No.】というものがあると思います。
これは、「2.検索論理式」にある表の通し番号になっています。
例えば、文献1の【式No.】は「1」となっていますが、これは、1つめの検索論理式から見つかった、ということを示しています。
どの文献が、どの検索論理式から見つかったかを知ることは、
仮説の検証につながるものであり、とても大切なことであると思います。
(検索論理式を立てることは、「この式であれば、こういう発明が見つかるだろう」という仮説を立てることのように思っています。)
4.スクリーニングサーチの結果(クレーム別形式)
スクリーニングサーチの結果(クレーム別形式)欄には、以下の情報が記載されています。
- 請求項、提示文献、関連個所、本願発明との対比等を整理した表
請求項、提示文献、関連個所、本願発明との対比等を整理した表は、以下のようになっています。
例えば、この表では、
調査対象の発明1(【クレームNo.】列参照)の構成と、調査により見つかった文献1(【文献No.】列参照)とを比較した結果を知ることができます。
そして、【カテゴリー】列を見ると、「A」と記載されていることから、この文献1では、調査対象の発明1を拒絶することができない、と判断されたことがわかります。
【関連個所】には、文献1において、「A」と判断する際に確認した場所が書かれています。
(「N21」というのは、段落【0021】を意味し、「F1」というのは、図1を意味します。)
【本願発明との対比】列には、「A」と判断する際に、文献1をどのように認定したかが書かれています。
上方には、一見して、すぐに認定結果が分かるように、
調査対象の構成要素の番号(「1a」等)と、「〇」、「△」、「×」等の記載があります。
(ここでは、「1a」に「〇」があるので、構成1aは、文献1に記載されていることを意味しています。)
また、文献1において、調査対象の構成要素について、どのような記載があったかも整理されています。
(これが、「〇」、「×」等の根拠になります。)
今回ご紹介した具体例のような表以外にも、主に、以下のような形式があります。【4】
テキスト形式
【本願発明との対比】列には、テキストでの説明のみで対比が行われています。
マトリックス形式
【本願発明との対比】列には、テキストによる説明ではなく、「〇」、「△」、「×」での対比が行われています。
(なお、先の具体例は、上記テキスト形式と、上記マトリックス形式との両方の記載がある、「折衷形式」になります。)
【4】【本願発明との対比】における各形式については、以下のリンクにて、記載があります。
他の登録調査機関では、何か違いがあるのか?
他の登録調査機関でも、フォーマットは同じであるように思います。
(全ての登録調査機関の検索報告書を見たわけではありませんので、もしかしたら違いがあるところもあるかもしれません。)
以下の特許出願における調査報告書を見てみたら、マトリックス形式で書かれていました。
ちょっと思うこと
現在の調査報告書ですが、【本願発明との対比】について、例えば、以下の点が分かりにくいかもなと考えています。
- テキスト形式、折衷形式であると、各文献間での比較がし辛い。
- マトリックス形式であると、各文献間での比較はし易いが、文献の認定をどのように行ったかが分かりづらい。
- いずれの形式においても、「技術分野」、「課題」、「他の文献との組み合わせの示唆」等の進歩性の判断に影響を及ぼす内容については、整理されていない。
このような点を踏まえて、近いうちに、より受け取った方に喜んでもらえる調査報告書のフォーマット、というのを考えてみたいと思っています。
関連リンク
【1】登録調査機関一覧はこちら。
【2】「テーマコード」ついては、別の記事で整理します。(追って更新予定。)
【3】文献のカテゴリーについては、以下のリンクにてご確認いただけます。
【4】【本願発明との対比】における各形式については、以下のリンクにて、記載があります。
最後に
もし何か気になることや知りたいことなどがございましたら、
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以上ですが、少しでも参考になる情報が含まれていれば幸いです。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました!