こんな疑問をお持ちの方々へ。
この記事では、この疑問に応えるために、種々の拒絶理由に関する拒絶理由通知書の見方を、実例を利用して整理しています。
また、拒絶理由通知には、「最初の拒絶理由通知」と「最後の拒絶理由通知」の2種類が存在します。
それぞれで構成が微妙に異なりますので、それについても整理いたします。
拒絶理由通知書の構成を整理したい方は、是非、最後までご覧ください!
目次
(構成以外の)最初の拒絶理由通知と最後の拒絶理由通知との違い
通知のタイミングの違い
拒絶理由通知書は、本願発明に、例えば新規性違反や進歩性違反等のような拒絶理由が存在する場合に、審査官により作成されるものになっています。
権利化までのプロセスにおいて、一番最初に通知された拒絶理由は「最初の拒絶理由」になります。
「最初の拒絶理由通知」とは、一回目の審査において通知すべき拒絶理由を通知する拒絶理由通知をいう。
したがって、一回目の拒絶理由通知は必ず「最初の拒絶理由通知」である。
また、二回目以降であっても、一回目の審査において通知すべきであった拒絶理由を含む場合は、原則として「最初の拒絶理由通知」である(例外については、3.2.1 (2)を参照。)。
【出典】第I部 第2章 第3節 拒絶理由通知
そして、最初の拒絶理由が通知された後に、請求の範囲を補正した場合には、補正された構成が拒絶理由を有するか否かが審査されます。
その際、補正にされた構成によって通知することが必要になった拒絶理由のみに、拒絶理由がある場合には、「最後の拒絶理由」が通知されます。
(例えば、補正がされずに、最初の拒絶理由が残っている場合には、それは「補正にされた構成によって通知することが必要になった拒絶理由」ではなく、拒絶査定されることになります。)
「最後の拒絶理由通知」とは、原則として「最初の拒絶理由通知」に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する拒絶理由通知をいう。
二回目以降の拒絶理由通知を「最後の拒絶理由通知」とするか否かは、拒絶理由通知の形式的な通知回数によってではなく、実質的に判断する。
「最初の拒絶理由通知」とするか「最後の拒絶理由通知」とするかの具体的な判断は、3.を参照。
【出典】第I部 第2章 第3節 拒絶理由通知
また、仮に、審査官が通知し忘れた拒絶理由や、審査官の勘違いで通知された拒絶理由が存在した場合には、2回目以降の拒絶理由であったとしても「最初の拒絶理由」が通知されます。
補正の制限の違い
別の記事で整理します。
最初の拒絶理由通知書の構成
各拒絶理由において共通する構成
ここでは、参考までに、事例1で利用する案件(特願2014-199948)の最初の拒絶理由(平成30年8月3日付け)を使って、ご説明いたします。
- 通知書内の赤字部分及び区切り線は、私が追記しております。
①書誌事項
ここでは、以下のことが記載されています。
- 特許出願の番号
- 起案日
- 特許庁審査官
- 特許出願人
- 適用条文
なお、審査官名の横の「8368」は審査官コード、「2R00」は審査室のコードになります。
(2Rは、住環境の分室である住宅設備を表しています。)
②先行技術文献調査結果の記録
ここでは、以下のことが記載されています。
- 調査した分野
- 先行技術文献
「調査した分野」欄では、審査官が、先行技術調査を実施した範囲(サーチ範囲)が記載されています。
ここでは、ざっくりした範囲しか記載されませんので、具体的にどのような調査が行われたのかはわかりません。
(どの案件にも、登録調査機関が作成した検索報告書が存在する可能性がありますので、詳細な検索式を確認したいという方は、検索報告書を探してみるのが良いかもしれません。)
検索報告書の探し方は、別の記事参照。
「先行技術文献」欄では、拒絶理由を構成することはなかったもので、技術水準等を示す文献が挙げられています。
現時点では、拒絶理由を構成するものとして挙げられていませんが、次回の拒絶理由の際に引用される可能性もあるため、時間がある場合には、ここの文献も、しっかりとチェックしておくのがベターです。
③補正をする際の注意
ここでは、こちらが補正をする際に注意するべき事項が書かれています。
別の記事でご説明いたしますが、最初の拒絶理由と、最後の拒絶理由とでは、補正への制限が変わってくるため、ここの記載が変わります。
④連絡先
ここでは、以下のことが記載されています。
- 審査官名
- 連絡先
審査官名は、拒絶理由通知書のトップで書かれている審査官名と異なる場合があります。
それは、この案件が、審査官ではなく、入庁されてまだ審査官に昇任されていない「審査官補」により審査されていることを意味しています。
連絡先ですが、最近は、FAX番号の記載がなくなっているかと思います。
進歩性の拒絶理由の構成
ここでも、参考までに、事例1で利用する案件(特願2014-199948)の最初の拒絶理由(平成30年8月3日付け)を使って、ご説明いたします。
- 通知書内の赤字部分及び区切り線は、私が追記しております。
①拒絶理由
ここでは、以下のことが記載されています。
- 理由(条文)
- その理由に該当する請求項
- その請求項を拒絶する際に引用される文献
ここでは、拒絶理由は、特許法第29条第2項(進歩性)に関するもので、それが「理由1」として表現されています。
そして、ここでは、請求項1が、引用文献1、2により進歩性が否定されていること(理由1に該当すること)がわかります。
当たり前のことを書いていますが、これを読み間違えた瞬間に、正しい主張が出来なくなりますので、留意しておきましょう!
②備考
ここでは、以下のことが記載されています。(この記載は、審査官によってバラつきがあります。)
- ②ー1:引用文献1の認定
- ②ー2:相違点の認定
- ②ー3:引用文献2の認定
- ②ー4:動機付け等
まず、何よりも興味深いのは、ここでは拒絶理由通知書の本丸とも言うべき項目が記載されていますが、これらは「備考欄」に書かれていることです。
(「備考」と聞くと、個人的には、おまけ的な感じがしてしまいます・・・。気になる方もいるかもしれませんが、この記事では深入りしません。)
この拒絶理由通知書においては、細かく書いてもらえていますが、中には、引用文献の認定しか記載されない場合もあります。
ただ、長く書いてあれば言いというわけではなく、簡潔に引用文献の認定のみの方が理解しやすい場合もあるため、それは案件次第(審査官次第)なところがあります。
最近は、相違点の認定まで丁寧にしてくれる方が多いという印象です。
請求項2以降も、請求項1と同じであるため、説明は割愛します。
③引用文献等一覧
ここでは、拒絶理由を構成する引用文献が記載されています。
滅多にないことですが、文献の番号が間違っている時があったりするので、
文献に違和感を感じた場合には、あまり悩まずに、審査官に直接聞いてしまうのが良いことかと思います。
最後の拒絶理由通知書の構成
最後の拒絶理由通知書の構成については、各拒絶理由において共通する構成に大きな違いがあるものの、個別の拒絶理由についての構成は大きく違いがありません。
そのため、ここでは、共通する構成のみ整理いたします。
各拒絶理由において共通する構成
ここでは、参考までに、事例1で利用する案件(特願2014-199948)の最後の拒絶理由(平成31年3月7日付け)を使って、ご説明いたします。
- 通知書内の赤字部分及び区切り線は、私が追記しております。
ここでは、以下のことが記載されています。
- ①:最後の拒絶理由であることを示す記載
- ②:最後の拒絶理由通知とする理由
- ③:新たに引用された文献があった場合には、その旨の記載
- ④:補正をする際の注意
①:最後の拒絶理由であることを示す記載、及び、②:最後の拒絶理由通知とする理由
これらの記載は、単に、出願人にわかりやすいようにするためだけで、別に書かれていなくても何も変わることはないと考えている方もいるかもしれません。
実は(?)、これらの記載をしなかった場合には、「最後」とすることが適当であっても、「最後」として取り扱ってはいけない旨、審査基準には記載されています。
ただ、本質的なものではないですし、これがあったらラッキーくらいの印象でしょうかw
(長年に亘り、拒絶理由を見てきましたが、今のところこのような案件に当たったことはありません。)
(7) 「最後の拒絶理由通知」とする場合は、「最後」である旨とその理由を記載する。「最後」である旨又はその理由のいずれかを記載しなかった場合は、たとえ「最後」とすることが適当であったとしても、審査官は、「最後の拒絶理由通知」をしたものとして取り扱ってはならない。
すなわち、その拒絶理由通知に対して行った補正が、第 17 条の 2 第 3 項から第 6 項までのいずれかの要件を満たしていなかったとしても、審査官は、補正の却下の決定をしてはならない。
【出典】第I部 第2章 第3節 拒絶理由通知
③:新たに引用された文献があった場合には、その旨の記載
最後の拒絶理由に限らず、2回目の拒絶理由通知が出される際に、新たに引用された文献があった場合には、その旨の記載(「(新たに引用された文献)」という記載)が入ります。
この記載のおかげで、前回の拒絶理由で引用された文献との関係性が明確になり、検討する際の効率が少し上がります。
これに関しては、仮に、記載忘れがあっても、何もなかったかなと。
④:補正をする際の注意
別の記事にて整理する予定ですが、最後の拒絶理由通知書が届くと、最初のときと異なり、大きく補正の制限がかかります。
ここの記載では、どんな制限があるか整理してくれています。
最後に
ここでは、ざっくりと、実務で多く見かける事例のみを取り出して整理しています。つまりは、網羅的なものではないので、ご注意ください。
もっと知りたい方は、審査基準をご覧いただければ幸いです。
この記事の知識があれば、直接審査基準を読んでも、難なく理解できるかと思います。
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