意見書・補正書作成

意見書の書き方を学ぶ前に留意すべき事項を整理したい!

意見書を作成する際に、どんなことに注意すればいいのか、いまいちわかっていないんだよね。

こんな疑問をお持ちの方々へ。

この記事では、この疑問に応えるために、意見書の書き方を学ぶ前に留意すべき事項を、具体的な意見書を見ながら整理しています。

具体的に整理をする前に、少しだけ、私の意見書に対する考え方をお伝えしたいと思います。

意見書は、特許審査官から拒絶された際に提出する点、及び、拒絶理由を解消している旨を主張する点から、私は、一度フラれた相手に再度アプローチすることに類似していると考えていますw

意見書の本丸である「意見の内容(詳細は後程!)」の記載に関しては、何を書くのか特に決まりはないため、基本的には何を書いても問題はありません。

だからこそ、「好きな相手に、どう伝えれば振り向いてもらえるのか?」という姿勢のもと、意見書を構築するのが大事なのではないかなと考えていますw

(たまにですが、意見書において、審査官の判断を真っ向から否定し、更には批判までするものを見かけます。論理的に正しい主張をするのも大前提ですが、人間である審査官相手に意見していることも前提として考える必要があると考えています。)

このブログでは、このような姿勢を前提として、意見書の作成をしていきます。
それでは、早速、意見書作成にあたっての留意点を整理していきましょう!

↓このページの内容は、以下の動画からも確認することができます。↓
後日作成予定。

意見書の構成(様式等)

ここでは、意見書の構成を、実際の意見書を見ながら確認していきたいと思います。

実際の意見書ですが、事例1で利用する案件(特願2014-199948)の最初の拒絶理由に対する意見書(平成30年10月3日付け)を利用いたします。

  • 意見書内の赤字部分は、私が追記しております。

1.書誌事項

ここでは、以下のことが記載されています。

  • 書類名
  • 整理番号
  • 提出日
  • あて先
  • 事件の表示(出願番号)
  • 特許出願人(識別番号、名称等)
  • 発想番号

これらは、様式に沿った記載になりますので、特に留意すべき点はないように思います。

なお、整理番号とは、・・・・を示しています。

また、発想番号とは・・・を示しています。

この意見書においては、記載されていませんが、場合によっては以下の項目も記載します。

  • 証拠方法
  • 提出物件の目録

証拠方法とは、・・・・を示しています。

また、提出物件の目録とは・・・を示しています。

2.意見の内容

ここでは、意見の内容について説明いたします。
意見の内容とは、その名の通り、審査官に対し意見をするものとなっていまして、拒絶理由通知書に対して、どのような対応をし、どのような結果となると考えているかを主張していきます。

これだけでもお分かりいただけるかと思いますが、「意見の内容」欄は、意見書において一番大事な部分となります。

しかしながら、一番大事な部分ではあるものの、具体的にどのような様式で書けば良いのかは指定されていませんので、慣れていない方は、何を書いてよいのかわからなくなるかと思います。

ここで、一旦、先程の具体例を見て、何が書いてあるのかを確認してみましょう。

この意見書では、以下のことが記載されています。
(私が追記した赤字部分により、読みにくくなってしまっていてすみません・・・!)

  • 1.はじめに
  • 2.補正の説明
  • 3.拒絶理由に対する意見
  • 4.結論

これらの項目を、もう少し細かく見ていきます。

拒絶理由通知書の概要・意見書の要点

意見書の「1.はじめに」欄の記載には、以下の記載があるかと思います。

  • 拒絶理由通知書の概要

 平成30年8月9日付け発送の拒絶理由通知書において、以下の理由により特許を受けることができないと認定されました。

 この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された先行文献1(特開2013-179987号公報)及び先行文献2(登録実用新案第3091960号公報)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

  • 意見書の要点

 本出願人は上記拒絶理由通知書を受けて、本意見書と同時に提出の手続補正書により本願特許請求の範囲及び明細書について補正をしました。本出願人は、この補正後の特許請求の範囲に係る発明は、特許査定されるべきであると確信しておりますので、下記に意見を述べさせていただきます。

補正の概要(補正の根拠含む)

意見書の「2.補正の説明」欄の記載には、以下の記載があるかと思います。

  • 補正の概要(補正の根拠含む)

2.補正の説明
 請求項1につきまして、
「 浴室の壁に取り付けられるカウンターにおいて、
 前記カウンターは、その周囲に設けられた全ての側端面を前記浴室の壁および浴槽から離間させ、
 前記カウンターの下面に一端が取り付けられた支持材の他端を、前記壁に取り付けて、前記カウンターを支持して、
 前記支持材の一端は、前記カウンターの下面の前記側端面から離れた位置に取り付けられており、
 前記カウンターの前記側端面より前記浴室の壁から離れた位置にある前記支持材の上面は、前記浴室の壁へ近づく方向へ向かって下方に傾斜していることを特徴とする浴室用カウンター。」
とする補正を行いました。

 この補正は、出願時当初明細書の段落0024及び出願時当初図面の図4、8、9の記載に基づくものであり、該記載から読み取れる事項です。
 この補正との整合性を取るため、明細書本文についても補正を行いました。

本願の概要・引用例の概要・対比・(小括)判断

意見書の「3.拒絶理由に対する意見」欄の記載には、以下の記載があるかと思います。

  • 本願の概要

 本発明は、「前記カウンターは、その周囲に設けられた全ての側端面を前記浴室の壁および浴槽から離間させ、前記カウンターの下面に一端が取り付けられた支持材の他端を、前記壁に取り付けて、前記カウンターを支持して、前記支持材の一端は、前記カウンターの下面の前記側端面から離れた位置に取り付けられており、前記カウンターの前記側端面より前記浴室の壁から離れた位置にある前記支持材の上面は、前記浴室の壁へ近づく方向へ向かって下方に傾斜している」という特徴的構成を有しております。

 本発明は、カウンターの側端面を壁や浴槽から離間させた上で、カウンターの下面のうち側端面から離れた位置に取り付けた支持材で壁に固定したことにより、カウンターの側端面は壁や浴槽ばかりでなく支持材からも離間した状態となります。そのため、カウンター上から界面活性剤を含んだ水がカウンターの側端面に垂れ流され、界面活性剤がカウンターの側端面に残っても、カウンターの側端面を端から端まで、洗剤とスポンジ等の清掃用具で簡単に清掃することができます。したがって、カウンターへのカビの発生を抑制することが可能となります。
 また、カウンターの前記側端面より前記浴室の壁から離れた位置にある支持材の上面は、浴室の壁へ近づく方向へ向かって下方に傾斜しているため、出願時当初図面の図7に記載されたように、スポンジ等の清掃用具および指を、カウンターの下面と支持材の上面とで囲まれた空間に容易に差し込むことができます。したがって、カウンターへのカビの発生をよりしっかりと抑制することが可能となります。

  • 引用例の概要・対比

 引用文献1に記載された発明においては、浴室の壁に取り付けられるベンチカウンターについて記載されているものの、本願の特徴的構成については記載も示唆もありません。

 引用文献2に記載された発明においては、支持材の一端がカウンターの下面の側端面から離れた位置に取り付けられている点について記載されております。しかし、本願の特徴的構成である、カウンターの側端面より浴室の壁から離れた位置にある支持材の上面が浴室の壁へ近づく方向へ向かって下方に傾斜している点について、記載も示唆もありません。すなわち、引用文献2の図5に記載されている通り、引用文献2には、支持材の一端がカウンターの下面の側端面から離れた位置に取り付けられているについては開示されているものの、スポンジ等の清掃用具および指を、カウンターの下面と支持材の上面とで囲まれた空間に容易に差し込むことができるものではありません。したがって、引用文献2に記載された発明においては、上述した本願特有の効果を奏するものではありません。

  • (小括)判断

 以上のことにより、仮に引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された発明を適宜組み合わせることができたとしても、本願発明とはならず、上述した本願特有の効果を奏するものではありません。したがって、例え当業者であっても、本願発明は容易に想到できるものではありません。

まとめ

意見書の「4.結論」欄の記載には、以下の記載があるかと思います。

  • まとめ

4.結論
 以上より、ご指摘の拒絶理由は解消されたものと思料致します。つきましては再度ご審査いただき、特許査定を賜りたくお願い申し上げます。

【大事】意見の内容では、審査官が審査をするプロセスに沿った主張を行うのがベター!

意見の内容についてまとめると、以下の項目が書かれていることが整理できたと考えています。

  • 拒絶理由通知書の概要
  • 意見書の要点
  • 補正の概要(補正の根拠含む)
  • 本願の概要
  • 引用例の概要
  • 対比
  • (小括)判断
  • まとめ

これらの項目をご覧になって、ピンと来た方もいらっしゃるかと思いますが、これは、審査官が審査をするプロセスに沿ったものとなります。

もちろん、(繰り返しになりますが、)意見の内容は、様式がなく自由に書けるものであることから、意見書の全部が全部、この内容になっているわけではありません。

しかしながら、意見書では、審査官を説得する必要があるため、審査官の審査プロセスに沿って主張する方が、審査官の理解を促せるのではないかと考えています。

そのため、これらの項目・順序で、意見書を書いていくことがベターだと考えています。

  • 審査官を説得するため、「意見の内容」欄では、審査官が審査をするプロセスに沿った主張を行うことがベター!

意見書の応答期限

意見書の応答期限は、拒絶理由通知書の発送の日から60日以内となっており、この点は、拒絶理由通知書にも以下の記載があります。

この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。

例えば、〇月〇日に発送された場合、・・・

応答期限の延長

「通知書の発送の日から60日以内」という応答期限ですが、申請により、2カ月の延長をすることが可能です。

この延長には、理由を求められることはありませんので、補正書・意見書の準備に時間がかかってしまう場合に気軽に利用することができます。
(もちろん、その分、審査結果が出るタイミングも遅れる可能性があるため、その点は留意が必要です。)

なお、延長の申請は、通常、応答期限内にすることになると思いますが、応答期限後であっても、2カ月以内であれば、延長の申請をすることが可能です。

ただし、申請にかかる費用が、2100円から51000円に跳ね上がるため、注意が必要です。

  • (基本中の基本かもしれないが、)応答期限を守って対応することがベター!

意見書を書く際の一般的な留意事項

基本的には、「審査官が審査をするプロセスに沿った主張を行うこと」が、留意すべき事項を考える際のポイントとなります。

この点をより意識するため、また、「好きな相手に、どう伝えれば振り向いてもらえるのか?」という冒頭において言及した姿勢を意識するために、
具体的に留意すべき事項を挙げていきたいと思います。

(ここで挙げる事項は、現時点で、私が特に留意すべきであると考えているものとなっています。今後、ここも留意すべき、という事項が出てきましたら、追記していきます。)

補正をした場合には補正の根拠を示しているか?

補正がされている場合には、審査官は、その補正が適法かチェックする必要があります

最初の拒絶理由通知書に対する補正である場合には、「新規事項の追加があるか」、「シフト補正になっていないか」をチェックすることになります。

そのため、「意見の内容」の「補正の概要(補正の根拠含む)」という項目において、しっかりと適法である旨を主張することが、審査官の審査スピードを促すことに繋がります

審査スピードが向上すれば、審査官は早く帰れて嬉しいかもしれませんw
少なくとも、補正の根拠を一から自身でチェックすることになるよりは、嬉しいと思います。

このような、審査官にとってメリットのある意見書を目指すことは大事なことであると考えています。

  • しっかりと補正の根拠を示して、審査官の審査スピードを向上させろ!

主張している効果は請求の範囲に記載されている構成に対応するものか?

いろんな方の意見書を見ていると、ほとんどの意見書において、本願発明が奏する効果を主張しています。

しかしながら、その効果が、(補正後の)請求の範囲に即していないものとなっている意見書が散見されます。

審査基準にもあるように、その効果が、(補正後の)請求の範囲に即していない場合には、審査官は、その効果を参酌することができません。

仮に、主張されている効果が、(補正後の)請求の範囲に即していないと思われる場合には、審査官は、技術常識等も考慮して、一から、その効果を参酌すべきか検討しなければならなくなります。(審査スピードの鈍化の可能性。)

このような事態を避けて、審査官の審査スピードを向上させることが大事であると考えています。

  • 請求の範囲に記載されている構成に対応した効果をしっかりと主張し、審査官の審査スピードを向上させろ!

権利行使の妨げになる主張をしていないか?(禁反言を意識)

この点は、審査官のためというよりは、自分のために留意すべき点となります。

権利行使の妨げになる主張とは、例えば、以下のようなものがあるかと考えています。

本願:ノズルが動くウォッシュレット。(ノズルが動く方向としては、前後だけでなく左右も想定。)

意見書:ノズルが動く方向としては、左右は想定していない旨主張。(左右の動きを排除。) ← 権利行使の妨げになる可能性がある主張

権利行使時:特許の権利範囲として、左右の動きを含むものと主張することは、いわゆる「禁反言」として認められない。

このような主張は、どうしても権利化したいという気持ちが前面に出てしまい、目先の拒絶理由を解消することだけに集中してしまっている場合に、生じるものだと考えています。

このような主張をしないように、常に、権利化の目的を見失わないように意識することが大事であると考えています。

  • 権利行使時に禁反言に該当しないように、常に、権利化の目的を見失わないように意識することが大事!

読み手を意識しているか?

これは、特許審査に限らず、人間相手に仕事をする際には、とても大事なことであると考えています。

それは、人間が行う判断には、主観が入ってしまうことが多々あるからです。

特に、意見書の場合には、一度そっぽを向いてしまった審査官を、振り向かせなければなりません
そのため、他の業務よりも一層、相手の気持ちを意識して、文章を構成する必要があると考えています。

いろいろな方の意見書を見ていて、気を付けた方が良いかもと思う主張は、特に以下のものだと考えています。

  • 冗長な主張
  • 攻撃的な主張>
  • 主観的な主張

冗長な主張は、相手の集中力を削ぎ、自分たちが真に主張したい内容が伝わらない可能性があるかと思います。

攻撃的な主張(審査官の判断を真っ向から否定する主張等)は、相手も攻撃的にさせ、建設的な議論とならなくなる可能性があるかと思います。

主観的な主張(自分の発明はとにかく素晴らしいという主張等)は、シンプルに「そんなの知らないよ」と無視される可能性があるかと思います。

仮に、フラれた相手に再度アプローチする際に、「私という素晴らしい人間をフるなんて、あなたの判断は常軌を逸している。だから、その判断を一度覆して、私と付き合いましょう。」と言っても、再度フラれる可能性が高い気がします。

(もちろん、上手くいく可能性はゼロではないと思いますがw)

審査官にフラれないようにするため、少なくとも、これらの主張は避けるべきだと考えています。

  • こちらの主張を通すためにも、相手の気持ちに寄り添わない主張は避けることが大事!

最後に

ここでは、意見書の書き方を学ぶ前に知っておきたい事項を、ざっくりと整理しました。

この後は、補正書の留意点を整理するか、意見書の書き方に関する作業フローを整理しましょう!

もし何か気になることや知りたいことなどがございましたら、
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可能な範囲で対応させていただきます!

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